不動産のまめ知識

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賃貸物件の「鍵」どうしていますか?
すまいの安全を守る「鍵」。住居と鍵は切っても切れない関係にありますが、賃貸住宅の鍵の最も適切な管理方法
とはどのようなものでしょうか。鍵にまつわるトラブルや判例をもとに、考えてみましょう

1.賃貸物件の鍵は誰のもの?
部屋を借りた(貸した)とき、その物件に初めからついている鍵は、基本的にその物件の一部として扱われます(民法242条)。
物件が貸主の所有物であれば、鍵の所有権は貸主に帰属するのは当たり前のように感じますが、借主に費用を負担してもらって鍵を交換したらどうなるのでしょうか。
一般的な住居の鍵はシリンダーと鍵に分かれていて、シリンダーがドア等の建物の一部となっていて、それぞれが賃貸物件の所有権と分離して、個別の所有権の対象となるとは考えにくいとされます。
その一方で、南京錠のように住居から取り外して持ち歩ける鍵の場合、その鍵単体に所有権を認めても問題がなさそうです。
また、基本的にスケルトン状態での引渡しが行われる事業用物件については、契約の段階で鍵を含めて取り決められることが多く、一概にどちらというのは難しそうです。
なお、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(平成23年改訂版)」の中で、賃貸住宅の鍵交換費用については『物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当』と書かれています。
このガイドラインの記述の裏を返せば、「鍵も含めて貸主の所有物なので、その所有物に関する費用について、まずは所有者が負担するべき」とも読めなくありません。

2.鍵交換は必須?
最近の賃貸住宅では、入居のタイミングで鍵を交換するように変わってきています。
かつては退去のタイミングで鍵を交換することもありましたが、特に費用を借主が負担する場合、退去後の鍵交換では本当に鍵を交換したのか判断できないといった問題があり、入居のタイミングで鍵を交換するようになったようです。
ところで、鍵の交換は賃貸借契約において必要不可欠なものなのでしょうか?その疑問に答えるかのような判決が、平成29年3月23日の東京地裁判決です。この判決の中で、「賃借人の交代に当たり、旧賃借人が使
用した鍵を交換することは好ましいこととはいえるものの、それが賃貸人の負うべき義務に当たるとは直ちにはいえず」との判断が下されました。
その一方で、判例では先述の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(平成23年改訂版)」とは状況が異なるとの指摘もあり、結論として、基本的には必ず鍵交換を貸主の負担でも実施しておいた方が良さそう
です。

3.合鍵やスペアキーの正しい管理方法とは?
鍵をメーカーから買うと、一般的にキーシリンダーとそれに合う鍵が4~6本が1セットになって納入されます。
はじめから鍵が4本あれば合鍵を作製する必要はなさそうですが、鍵を紛失したりして足りなくなって、合鍵を作るケースがあります。
なお、合鍵と一口に言っても、メーカーが作成する「純正キー」と鍵屋さんで作成する「複製キー」とが存在し、後者は前者より早く、安価に手にいれることができますが、精度が前者より劣り、鍵の抜き差しの違和感やひっかかりなどの不具合や耐久性が低いといった短所があります。
なお、鍵の種類によっては複製キーの作成をメーカーが認めていなかったり、複製キーを作成できなかったりする鍵もあります。
それでは、入居者が決まり、入居者に鍵を引き渡すとき、入居者に何本渡し、残った鍵はどのように保管すべきなのでしょうか?

①物件のキーケースに入れたままにする
 アパートなどの空室を不動産屋さんが案内するとき、物件の周囲にキーケースを設けて中にカギを収納しておけば、オーナーさんが案内の度に不動産屋さんに鍵を渡す手間が省けて便利です。そこで、このキーケースに
入居している物件の鍵を保管するのはどうでしょうか。
 一般的に販売されているキーケースは、4桁の番号を合わなければ開かないため、番号を知らなければ開けられないと思いがちですが、実際は番号を知らなくても早ければ数分、遅くても数時間でケースを開けることが
できてしまいます。また、頑丈なキーケースといっても、一般に販売されている製品は、それ自体の破壊も比
較的容易なため、決して安全な保管方法とはいえません。

②管理会社や不動産会社に預ける
 静岡の賃貸物件のオーナーさんで一番多いパターンかと思われますが、安心は禁物です。
 インターネットで「合鍵・管理会社・逮捕」あるいは「合鍵・不動産会社・逮捕」などの文言で検索すると、十数件以上の合鍵の不正使用事件が確認できます。
 また、不動産会社の社員等が犯人とならなくても、紛失した鍵が悪用されたり、不動産会社に侵入した泥棒が合鍵を持ち出して悪用したり、といったリスクも考えられなくありません。
 不動産会社の社員や元社員が犯人なら、不動産会社に損害賠償を求めることもできますが、ひとたび重大な事件が起きてしまえば物件のイメージダウンは避けられず、残念ながら万全な保管方法とはいえないでしょう。

③オーナーが自分で保管する
 鍵を他人に預けるのでは問題が解決できないのであれば、オーナーが自ら鍵を保管すれば良いのでしょうか?
 まず、盗難や紛失した鍵の悪用のリスクは、オーナー自身が鍵を管理していても、不動産屋や管理会社に預けていても、特に変わりません。むしろ、何か事件が起きたときには、オーナー自身が犯人として疑われやすい
、というリスクが考えられます。
 また、オーナー自身が鍵を保管しているということになれば、何か問題が起きた際にオーナー自身に対応を迫られることとなります。オーナー自身が積極的に問題に関与する意思が無いのであれば、決して良い保管方法とはいえないでしょう。

④保管しない
 そもそも鍵を保管しないという選択肢は検討の価値が無いのでしょうか。
 実は大手ハウスメーカーである管理会社では、入居者に鍵を引き渡した後、スペアキーや合鍵を保管していません。そもそも、借主には鍵を含めて物件を適切に管理する義務があるため、鍵を紛失してしまった責任は借主が負担しなければいけないのです。
 実際に保管している鍵で解錠しても、ドアガード(U字ロック)やドアチェーン(チェーンロック)が掛かっていれば、これらを何らかの方法で突破しなければ、部屋の中には入れません。
ただ鍵を預かっていたからといって、問題が解決するものでは無いのであれば、スペアキーや合鍵を預からないという選択肢は十分に評価に値すると思われます。

4.まとめ
 これまで鍵の保管方法を検討してきましたが、オーナーとして最も理想的な賃貸物件の合鍵、スペアキーの取り扱いとはどのようなものでしょうか。
 まず、鍵は原則として賃貸借契約の度に交換することが、入居後のトラブルを避けるために必要です。
 借主に費用を負担して交換してもらえれば理想ですが、必ずしもそれができるとはいえませんので、その場合はオーナー負担でも交換しておいた方が良さそうです。
合鍵やスペアキーについては、スペアキーを全て借主に引渡すのが安心です。また、合鍵は精度や耐久性が劣るので、使用するのは避けるべきでしょう。
そして最後に、物件内での事件や事故に備えて、十分な内容の火災保険に加入するようにしましょう。
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